エリザベス (1998) »レビュー

映画全編に漂う女性ぽい視点はゲイのテイスト

60点 2008/07/30 by 牧坂満

 映画冒頭で“プロテスタント”を迫害する“カトリック”回帰宣言下のメアリー1世の非情さがプロパガンダ的に描かれていますが、元々が一神教の世界なので、異教徒に対する攻撃は想像を絶しています。当時、弱小国家に過ぎなかったイングランド独立のためにエリザベス1世として就任するまでを半生をケイト・ブランシェットが堂々とした存在感で演じていますが、自分自身の感情を抑制して運命を受け入れて真っ直ぐに前進していく女王の姿にNHK大河ドラマの「篤姫」を彷彿とさせられました。

 しかし、スコットランドのメアリー女王の存在感も見事だった反面、名優を配した筈の男優たちが目立たないのは何故でしょうか。シェカール・カブールという監督は女性ではないかと思っていましたが、映画生活で調べてみると男の監督のようです。そう考えると、映画全編に漂う女性ぽい視点はゲイのテイストかもしれません。だから、出演している男優たち全員が去勢された男のような雰囲気を醸し出しているのでしょう。映画前半の教会内部から登場人物を俯瞰するカメラアングルやクローズアップの多用、陰謀の舞台に相応しい光と影の演出に工夫が見られますが、原作の歴史的事実をなぞるのが精一杯だったのか、歴史的背景を知る教科書的展開には不満が残ります。その中でも軍費の支出に苦労したイングランドが私掠船を認めて、植民地から帰国するスペイン船への海賊行為を後押しした事実を会話だけで描いたことは後のスペイン無敵艦隊の襲来に繋がった事件だけに、歴史的背景の勉強も不完全燃焼に終わってしまっていることが残念です。

 特筆すべきところは「ゴッドファーザー」でコッポラ監督が演出した祈りと殺人がカットバックされるところにあり、エリザベスが城内で祈りを捧げている時、エリザベスの手による者たちが陰謀を企んだ反対派を逮捕・殺害していくのです。日本映画の「大奥」同様に絢爛豪華な衣装を見せる時代絵巻として鑑賞すれば楽しめますし、大掛かりな美術セットも見事です。若きエリザベスの前半と威厳に満ちた能面のような女王の対比も見応えありです。

 【BS朝日】鑑賞

 

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