大脱走 (1963) »レビュー

動と静

100点 2008/04/02 by 牧坂満

 「史上最大の作戦」であったノルマンディー上陸作戦を成功させるために、連合軍首脳部が立案した陽動作戦の「大脱走」を描いています。監督はジョン・スタージェスですが、ハリウッド映画界ではジョンという名前の監督たちは、何故か“女”を描くことを不得手としている反面、“男”を描かせると見事な傑作に仕上げています。それは不得手を通り越して全く下手だった“ジョン・ヒューストン”を始めとして、当作品の“ジョン・スタージェス”や“ジョン・フランケンハイマー”、“ジョン・フォード”、そして、最近では“ジョン・ウー”や“ジョン・マクティアナン”が挙げられますが皆様のご意見は如何でしょうか。

 「大脱走」は第二次世界大戦でのドイツ軍の立場を公平な視点で描いていますが、これは、「戦場のピアニスト」における“ワッフェンSS”と呼ばれるナチス親衛隊と誇り高きドイツ国防軍を全く違った兵隊として描いているのと同じです。この差別化は軍服の襟章で見分けられます。“ワッフェンSS”は文字通り“SS”の文字が雷のようにデフォルメされたものを使用していますが、国防軍は横線二本が入ったデザインになっています。更に、「鷲は舞い降りた」のスーパーエリート兵士集団のドイツ空挺部隊は、「大脱走」の捕虜収容所所長ハンネス・メッセマー以上にと、“ワッフェンSS”を蛇蝎の如く嫌っていたのです。身体障害者だったがために脱走劇に参加しなかった連合軍側の将校とのシーンは戦争中の敵であっても「アラモ」のメキシコ軍将校が砦に生き残った非戦闘員の女性や子供、老人に敬意を表して敬礼する騎士道精神を感じさせてくれました。

 “国家の品格”を上梓した藤原正彦氏も著書で語っている弱者への思いやりやいたわりが出来る人間こそが騎士であり、日本でいう武士道精神なのです。アメリカンタフガイのジェームズ・ガーナーが、視覚障害者のために脱走を諦めかけたドナルド・プレザンスへ希望を与え、絶えず彼を気遣った行動にも騎士道精神を感じさせてくれる素晴らしい精神性を感じるのです。

 スティーブ・マックイーンのオートバイによる有刺鉄線を乗り越えるアクションシーンの“動”に血沸き肉躍らせましたが、リチャード・アッテンボローとゴードン・ジャクソンが「我々は間違っていなかった」と語り合う“静”のシーンも見事でした。

 

11人がこのレビューに共感したと評価しています。
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  • Re: 動と静

    2008/04/04 by 夢寝由来

    >監督はジョン・スタージェスですが、ハリウッド映画界ではジョンという名前の監督たちは、何故か“女”を描くことを不得手としている反面、“男”を描かせると見事な傑作に仕上げています。それは不得手を通り越して全く下手だった“ジョン・ヒューストン”を始めとして、当作品の“ジョン・スタージェス”や“ジョン・フランケンハイマー”、“ジョン・フォード”、そして、最近では“ジョン・ウー”や“ジョン・マクティアナン”が挙げられますが皆様のご意見は如何でしょうか。
    >
    画面の向こうで私は大笑いしています。プロの評論家たちが決して認めたがらない事実を見事に斬って下さってありがとうございます。
    本作は正にオール男優キャストですから。
    長い足を持て余し気味の自転車に乗るジェームズ・コバーンや後半から一転し暗所・閉所恐怖症に苦しむチャールズ・ブロンソンの“ウィリー”と相棒ジョン・レートンの名前を泣きながら呼ぶ姿も忘れられません。

  • 6人のジョン

    2008/04/06 by 未登録ユーザ ダイアゴナルフープ

    監督はジョン・スタージェスですが、“ジョン・ヒューストン”を始めとして、当作品の“ジョン・スタージェス”や“ジョン・フランケンハイマー”、“ジョン・フォード”、そして、最近では“ジョン・ウー”や“ジョン・マクティアナン”が挙げられますが皆様のご意見は如何でしょうか。⇔成る程と納得してしまいました。
    ジョン・ヒューストン監督の「黄金」という名画にはセンチメンタルな要素など皆無で、ヘミングウエイの非情な文体を画面で描いているハードボイルドさにノックアウトされました。
    “国家の品格”の弱者への思いやりやいたわりが出来る人間こそが騎士であり、日本でいう武士道精神なのです。⇔『牧坂満さん』、『夢寝由来さん』の映画生活での各・コメントにも武士道精神が感じられます。

  • 追伸、夢寝由来さん。

    2008/04/14 by 牧坂満

     厳つい顔のチャールズ・ブロンソンが暗所・閉所恐怖症に苦しむシーンは、私も思わず微笑んでしまいました。

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