ONCE ダブリンの街角で (2006) »レビュー

音楽で心が通じてしまうこと!

90点 2007/12/22 by 黄水仙

ONCE ダブリンの街角で

音楽映画なんだけど、流れてくる音の質が全部が全部いい音じゃない。銀行ではテープレコーダーで再生された音は最悪で、売込みをしたほうが「ほんとはもっといいんです」なんて弁解しちゃってるし。お父さんに聞かせたときも、似たようなもん。歌もギターも声もハートもいいんだけどね。ポイントポイントでその映画の背景として挿入される音楽は、もちろんチューニングされていてよい音なのだが、映画の地での音楽シーンは、ある意味でライブ感あふれる分、そんな風になっている。最初は少し気になったが、直にそれを歌う男の迫力に気圧されて気にせず聞きいってしまっている。

音楽で心が通じてしまうっていうこと、それは恋愛とは別にあるんだということ。うん、それって結構素敵。でも、音楽で心が通じてしまうことを一言で語る言葉がなくて、それは愛したり恋したりすることを「愛」とか「恋」と一言でいってしまうようにはなっていない。(「愛」とか「恋」とかとおんなじ言い方なら、そんな気持ちは「音楽」とか「歌」なんだろうけど、それはしかし、「音楽で心が通じた」という意味にはならない、残念ながら。)だから「愛」とか「恋」にすりかえてその感情を言葉にしようとする。そして間違っちゃうんだ、この映画にもあったように。でもこの映画はすぐこの間違いを訂正する。

この映画と観ると「音楽で心が通じること」が体験できる。

アイルランド・ダブリンの街角で弾きすぎて穴を開けてしまったギターを掻き鳴らし歌うストリートシンガーと、雑誌や花を売って生計を立て時に楽器店でピアノを弾くことを楽しみにしているチェコからの移民が、「音楽で心を通じてしまう」映画なのだ。

そう、そしてこの映画には子供の名前と音楽ミキサーの名前(二人とも紹介されたわけでした)以外には役柄に名前がない。ギター引きは「男」だし、チェコ移民は「女」でしかない。それは、明日の僕と君のことかもしれない、のかなあ。

まさに、師走の忙しいときの、一服の清涼剤。

 

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