サイドカーに犬 (2007)
»レビュー
根岸と竹内の心が感じられる快作
2007/06/20
by
すいか
まさに日本映画の存在価値を証明する作品だと思います。
この物語は映画も原作も、サイドカーや犬の使い方など分かりにくい点も多いのですが、分からないならそのままでよい作品でもあると思います。
そんな中で、あとは言われているように「余韻」がキーポイントになりますが、その意味でこの映画は素晴らしいと思います。
原作にはなかったですが、後半の海辺のシーンは素晴らしい余韻がありました。
薫にとってヨーコは、色々教えてくれたり経験させてくれたから有難い、というだけではなく、むしろ大人であるヨーコが薫を必要としている、「こんな私でも必要とされているんだ」と薫に思わせたからこそ、薫にとってもヨーコは強く思い出に残る存在なのでしょう。
根岸監督の演出は音楽も含め押し付けがほとんどなく、だからこそ余韻もさわやかになるのだと思います。
ヨーコ役の竹内結子については、この点はあまり知られていないようですが、昔のいくつかのドラマに出ていたのを見ても分かるように、非常に多彩な表現力の「幅」を持つ女優なので、今作のヨーコくらいのキャラを演じても驚きはありません。そもそも純愛物を演じること自体も、相当演技力がないとできませんけどね。
しかし、根岸監督がヨーコのキャラクターをマンガのようにはしたくないという意向があり、その上で強い印象を残すということで、本人にかなり多くの要素が要求される厳しい役だったと思います。印象を残すならマンガ風の演技をした方が手っ取り早いからです。
そんなヨーコが作品全体の無地のトーンの中に、狙っているように見せずにほのかにやさしさ、ぬくもりを漂わせ、一人で「色」を染める表現力はさすがだと思いました。
薫役というのはこの物語の中で一人だけ「目線」になっていて、印象に残りやすいオイシイ役どころなので、多くの人によく見えるのは当たり前な面もありますが、松本花奈の生まれ持った目の雰囲気がこの役にハマっていると思います。
私はむしろ、期待していなかっただけに弟役の子役(谷山毅)もがんばったな、という印象を持ちました。弟なのに、姉が少し苦手意識を感じるような雰囲気が出ていました。
あと誠役の古田新太は、時々いる「自然な芝居ができない舞台俳優」とは一味違う、役者としての「幅」を見せたと思いますし、トミーズ雅も「こういう業界に絡んできそうなタイプの男」を上手く表現していましたし、椎名桔平も役どころの割には二枚目ですが、この役に必要な「胡散臭さ」を醸し出していたと思います。
ほとんどの登場人物がマンガ風にならず、根岸監督の狙い通りになっていたと思います。
この映画はヨーコの髪型や頭突きのシーンなど原作とは違う面も多いですが、余韻のぬくもりは原作を超えている感があり、そこは根岸と竹内のさりげない心の温かさが作り上げたものだと感じます。
一般に原作の映画化の際、原作との答え合わせをして映画を批判する人もいますが、今回の映画を見るとそういう見方は根本的に勿体無いという感じがします。
それだけ映画独自の、素晴らしいオリジナルな余韻を感じさせてくれました。
2人がこのレビューに共感したと評価しています。
※ユーザー登録すると、レビューを評価できるようになります。
返信を投稿
Copyright©2009 USEN GROUP All Rights Reserved.

![DVD「サイドカーに犬 [DVD]」](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51ZKz9KLMzL._SL75_.jpg)
![DVD「サイドカーに犬 [DVD]」](/img/no_image_60.gif)




