善き人のためのソナタ (2006)
»レビュー
余韻で泣けたはじめての映画です。
2008/01/12
by
kanco
静かな作品です。友達と一緒に見るようなタイプの映画ではなく、一人静かに泣く映画です。けれど、見終わったあと必ず大切な友達に勧めたくなると思います。丹念な取材をもとに旧東ドイツの社会的な背景を見事に描いていますが、これは間違いなく人間ドラマだと思います。評価でもサスペンス的な出来を論じている方がいますが、それは違う。サスペンス的な要素はこの映画ではエッセンスでしかなく、そこにあるのは、愛、言葉、音楽、そして人間そのものです。人間の愚かさ、優しさ、哀しさ、愛しさ、切なさ、すべてが詰まっています。もしこの映画を見てヴィースラーの心情の変化が不自然に感じられたとしたら、それはアナタがあのピアノの旋律を、本気で聴くことが出来なかったのだと思います。あの時ヴィースラーは本気で聴いてしまったのです。ドライマンの弾く「善き人のためのソナタ」を。それはクリスタによって、またドライマンによって知らず知らずにもたらされたヴィスラー自身の変化によって、まるで生まれて初めて心に届いた調べだったのです。素晴らしい脚本、緻密な演出、魅力ある俳優陣、どれをとっても一級品です。音楽はすごい力を持っています。映画もまたすごい力を持っています。こんなにも心が揺さぶられたのは久しぶりです。間違いなく、傑作です。
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