善き人のためのソナタ (2006)
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傑作! 観てよかった。
2007/12/01
by
黄金のキツネ
つまらないと思っていた詩や小説を何年かしてから読み返してみると、以前とは違って感動してしまった経験って、案外誰にでもあるんじゃないだろうか。重ねた年数分だけ歩んだ人生によって気づかぬうちに内面的に成長し、その結果が作品の中から新たな意味を見出してしまうんだろう。
ヴィースラーの場合もそれと同じだ。彼がピアノ演奏を聴いたとき、それを感動として受け止められるだけの心の準備がなかったのなら、あの曲は単なる音の連なりとして通り過ぎてしまっただけだろう。
しかしそうではなかった。
女優への憧れから始まり、ヴィースラーが自覚しないままに、心の奥底に蓄積し育っていたものがあったからこそ、ピアノソナタで深く感動するような温かな人間性が現れたのだ。
このヴィースラーの微妙な変化、揺れる心の繊細な描写に魅せられる。そしてその後の彼の行動も危うい綱渡りのようなので、気を許せるところは一切なく、時間経過はまったく気にならなかった。
またヴィースラーを取り巻く人々が、多様で複雑な人間ドラマを実にリアルに演じている。それがとても素晴らしい。後半もかなりサスペンスフルで、とくに拘置所でのヴィースラーと女優とのシーンは圧巻だった。大声も出さず暴力にも訴えないで、よくあれだけ緊張感にあふれる尋問シーンを作り上げたものだと感心してしまう。
連日で2度鑑賞し、2度ともラストでは涙がにじんだ。芸術ももちろん大切だ。その力は十分に分かっているつもりだ。だが温かなコミュニケーションもまた人間には必要なことなのだと、改めてしみじみと思った。
非常に余韻が残る作品で、その後もいろんなシーンを反芻しています。ほんとうに後からじわじわと来る映画です。
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