寝ずの番 (2006) »レビュー

“粋人”の条件

100点 2008/04/28 by 牧坂満

寝ずの番

 日頃、船場の旦那衆と深い付き合いをしている大学の先輩に“粋人”の条件を三つに集約して回答を願ったことがあります。それは“美意識があり、資産があり、酒食を嗜むこと”。そして遊びの神髄は、金を使い、気を使い、唯、相手の喜ぶのを眺めていることだそうです。現代では究極の“粋人”の遊びは批判の対象になりそうです。

 映画は、日本最初の映画監督だった牧野省三を祖父とする俳優の津川雅彦が、マキノの姓を名乗って初めての監督に挑戦した意欲作品です。東映任侠映画の巨匠、マキノ雅弘の甥でもありますので、お座敷遊びをした方々ならば拍手喝采したくなるお話になっています。

 原作は「ガダラの豚」で奇想天外なストーリーテリングを見せてくれた、中島らも(早世しましたが才能が惜しまれます)の同名小説を忠実に映像化していますが、監督業初回演出ということで、三つのエピソードともに全力投球の姿勢が見えて好ましいのですが、緩急自在の“あ・うん”の呼吸も少し欲しい気がしました。

 法政大学体育会空手部OBにY・Aという体重100キロを超える猛者がいて、昭和46年の大学入学前からお座敷遊びの経験者だったので、お色気話やセックス猥歌に通じているので、芸者遊びのノウハウをレクチャーして貰ったことが思い出されます。好色な下ネタの艶笑落語には、「品川心中」「風呂敷」「鈴ふり」「疝気の虫」「お直し」「汲みたて」「紺屋高尾」「立ち切り」「文違い」…etcと枚挙に暇がありません。

 大阪西成区の飛田新地や東京墨田区の玉ノ井と聞かれて、思わずにんまりとしてしまう“遊び心”と、古典落語の上記艶笑話や「居残り佐平次」が分かる人間にとっての“粋”な映画です。

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