スケアクロウ (1973) »レビュー

二人に寄り添うカメラ

90点 2007/09/12 by 星空のマリオネット

1960年代後半から70年代半ばに制作された「アメリカン・ニューシネマ」と呼ばれる作品群を代表する一本です。残念ながら私は同時代にニューシネマを体験したわけではないので、この映画に対しても特別な思い入れはありません。
しかし、この二人の男の友情を描いた「スケアクロウ」は、とても良い映画だと思います。

(因みに、ニューシネマ末期或いはニューシネマ以降の作品と位置づけられている「カッコーの巣の上で」や「タクシードライバー」が、私にとっての同時代外国映画の先駆けでした。)

<アメリカン・ニューシネマとは>
「イージーライダー」や「真夜中のカーボーイ」といった他のニューシネマを代表する映画と本作との間には確かな共通点があります。
ベトナム戦争や実存主義からから産み落とされたと言われる「懐疑」「破滅」「反体制」や「不条理」といった世界観のもと、「夢と希望の物語を提供するハリウッド」を否定。昔ながらの、いわゆる「ドラマ」「カタルシス」「ハッピーエンド」からは・・・遠い映画たちです。
体制からはみ出し自由を求める放浪する若者たちが、世間=現実社会から傷つけられていく。そのナイーブで痛々しい姿が淡々とリアルに、しかし共感をもって描かれていきます。

<本作「スケアクロウ」について>
本作の主役は、ジーン・ハックマンとアル・パチーノ。

ジーン・ハックマン演じるマックスは、傷害事件を起こし、ぶち込まれた刑務所から6年の刑期を終え出所したばかり。自分で貯えたなけなしの金を元手に洗車屋を営もうと計画する。妹のことを愛する心優しいはずの彼は、暴力的で粗野で他人を信じることができない大男。

アル・パチーノ演じるライオンは、5年前に故郷や女から逃げ出し、船乗りになって放浪。しかし、女と未だ見ぬ我が子のもとに帰りたいと願って、可愛らしい電気スタンドを入れたプレゼントボックスを大事に抱えている、。
彼には自信はないけれど、人間のことが純粋に好きで、道化役として他人とコミュニケートしようとしている、懸命でナイーブな小さな男。

秀逸なファーストシーン(二人の出会い)から、苦渋のラストシーンにいたるまで、カメラは緊張感と暖かさをあわせ持った視線で、この二人に寄り添ってくれています。
この二人の互いを想う心や悲しい結末は、フェリーニの「道」をも想起させます。
ザンパノ、ジェルソミーナそしてマット(道化)の三人。このどうしようもなく悲しい関係と、マックスとライオンの関係。希望を奪われた二人。

「スケアクロウ」は単なる流行(はやり)のアメリカン・ニューシネマではない、人の心情・葛藤をジェリー・シャッツバーグ監督独自のスタイルで描いた名作であると思います。

 

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